本県は全国有数の農業県。標高10メートルから1400メートルまで広がる耕地を生かし、多種多様な農畜産物が生産されています。農業に変革が求められている現在、主要な15品種に着目、代表産地のJAを訪ね、安定供給に向けた努力や産地振興の取り組みをご紹介します。
※ 平成28年7月~29年10月まで上毛新聞に掲載しました。
Vol.15 牛肉
養豚、酪農が盛んな本県は、肉用牛の生産も全国上位。農林水産省の畜産統計によると、2017年2月1日現在、本県の肉用牛の飼養頭数は5万8400頭で全国10位。県内では県央から東毛にかけて生産が盛ん。中でも前橋市は一大産地になっていて、同省の15年の市町村別農業産出額の推計によると、肉用牛の産出額はトップだった。JA前橋市は組合員が生産する良質な牛肉のブランド化を進めて販路拡大を図るほか、JA全農グループのエーコープ関東と協力して独自商品を開発。地元での消費拡大にも力を入れ、畜産県・群馬を大きく盛り上げる。
Vol.14 生乳
本県は酪農も盛ん。農林水産省の統計によると、2015年の生乳生産量は約25万㌧で、全国4位。県内有数の酪農地帯の一つが長野原町北軽井沢。高原の冷涼な気候を生かして健康な牛を飼育し、良質の生乳を生み出している。北軽井沢を擁するJAあがつまの出荷量は年間2万8500㌧で、県内総合JAではトップだ。生乳は鮮度が命。JAは酪農家が生産した生乳を新鮮なまま確実に乳業メーカーに届けるシステムを運営し、子どもたちや消費者の健康維持・増進に貢献。加工にも積極的に関わり、消費拡大を図っている。
Vol.13 小麦
本県の郷土食「おきりこみ」「焼きまんじゅう」「すいとん」に欠かせない小麦粉はパンやラーメン、パスタ、菓子類、しょうゆなどにも姿を変え、食卓に登場しない日はないほどに身近な食材だ。本県は栽培が盛んな土地柄。農林水産省の統計によると、2016年の出荷量は全国4位。コメとの二毛作が主流で、冬から初夏にかけて生産されている。高崎市の平野部は良質な小麦の産地の一つ。JAたかさきは加工事業に力を注ぎ、消費拡大や生産振興を図っている。
Vol.12 ウメ
日本文化に関わりが深いウメ。花は甘い香りとともに春の先触れとして親しまれ、和歌や絵画、工芸、彫刻などにたびたび登場する。果実は梅干しに加工されたり、梅酒の素材に利用されたりと、日本の食に欠かせない。本県はウメの国内有数の産地。農林水産省の統計によると、長年、和歌山県に次ぐ全国2位の生産量を維持している。中でもJAはぐくみ管内の高崎市北西部は榛名、箕郷の両梅林を擁す県内最大の産地。価格の低迷や高齢化の波が押し寄せているが、JAは熱中症予防や疲労回復・殺菌効果といったウメの効能をPRして消費拡大を図るほか、6次産業化も推進し、産地の維持・発展を支えている。
Vol.11 ナス
漬物やしぎ焼き、焼きナス、マーボーナス…。幅広い料理の素材として活躍するナスは、本県の特産野菜の一つ。農林水産省の統計をみると、2016年の本県の出荷量は全国3位。県内平野部で広く栽培されているが、県内JA最多の年間約3660㌧を出荷するJAにったみどりの管内は特に栽培が盛ん。価格が安定している上、初期投資が少なくて済むことから、JAなどが新規就農者にナスの作付けを推奨。生産者は増加傾向にある。県や桐生、みどり市も生産振興に協力し、強力な援護体制を整備。こうした取り組みが実って本県は昨年、夏秋ナスで12年以来の出荷量全国1位を達成した。トップ産地として、さらなる生産振興を目指す。
Vol.10 豚肉
群馬は全国有数の養豚県。農水省の統計によると、2015年の養豚の農業産出額は422億円で全国5位。渋川市は県内の主産地の一つで、「赤城ポーク」が名高い。赤城ポークはJA赤城たちばなのブランド。商標登録は2011年だが、誕生は1999年以前にさかのぼる。同年、3JAが合併し、赤城たちばなになったが、その一つ、旧JA横野が最初に立ち上げた。生産の中心は同市赤城町の養豚団地。11戸の養豚農家で組織する「赤城ポーク生産組合」が豚の種類、エサ、食肉処理の3点を統一。高品質銘柄豚として丹精込めて育てている。
Vol.9 小玉スイカ
小玉スイカは直径20センチほどの小ぶりなサイズに甘みが凝縮し、シャリシャリとした食感とともに愛されている一品。太田市薮塚地区が主産地で、熟練の農家が愛情をこめて育てている。スイカは夏のフルーツというイメージが強いが、この地は恵まれた日照時間を生かしてハウスで栽培。出荷は3月から始まり、盛夏を迎えるころに終了する。昨年は8キロ箱で約14万ケースを出荷、首都圏など各地で好評を博した。100年前に栽培がスタートした伝統の産地も、近年は生産者が減少傾向。JA太田市は技術向上などで品質を一層高め、ブランド力を強化。新しい作型への勧誘も図る。
Vol.8 やよいひめ
「やよいひめ」は県育成品種のイチゴ。強い甘みと程よい酸味、みずみずしさを備えている。一般的な品種より粒が一回り大きく、色は淡め。果皮や果肉が丈夫で、長持ちするのが特徴だ。3月(弥生)に入っても大きさが変わらず、色の鮮やかさや形の美しさといった品質を維持できるため、名付けられた。県産イチゴの7割以上を占めていて、クリスマスから初夏にかけての促成栽培では8割以上となっている。主産地の一つ、藤岡市では今が収穫の最盛期。JAたのふじは生産者団体と共に、付加価値を高めたり、販路の拡大を図るなどして生産を盛り上げている。
Vol.7 ちぢみほうれん草
ちぢみほうれん草は、厚みのある縮れた葉が特徴。葉の生え方も独特で、地面をはうように、円盤状に広がる。甘みが強く、多くの消費者を魅了。冬季限定の品種だ。県内一の産地を擁すJA佐波伊勢崎は13年前、冬場の収入対策として、ちぢみほうれん草部会と二人三脚で品質管理を徹底し、ブランド力を高め、販路を広げてきた。今季から生産者の手間を省くため、包装を変更。装いを新たに、生産の一層の拡大を図る。出荷時期は来月20日頃まで。「からか~ぜ」(伊勢崎市田中町)、「からか~ぜまゆの郷」(同市境百々)を中心に管内の直営直売所6店などで扱っている。
Vol.6 下仁田ねぎ
太い白根から葉が扇状に広がる下仁田ねぎ。生では食べられないほどの辛さだが、加熱すると甘く、とろけるような食感になる。江戸時代、殿様に献上されたことから「殿様ネギ」とも呼ばれ、今でも贈答用に重宝されている。群馬が誇る特産物で、シーズンになると産地の直売所で販売されるほか、煎餅やポテトチップス、ラスク、ラーメン、ふりかけ、ネギみそなどに加工され、駅の特産物コーナーなどに並ぶ。生産者部会を通じて栽培を支えてきたJA甘楽富岡は、新商品開発などで新たな需要を掘り起こし、伝統の味を一層広く届けることに力を入れている。
Vol.5 コンニャクイモ
こんにゃくはおでんやすき焼きといった日本食に欠かせない定番。低カロリーでヘルシーな食材としても注目され、ステーキやスイーツなどさまざまな形で食卓に上がる。原料のコンニャクイモは群馬を代表する特産物。収穫量は国内トップで、農林水産省の統計によると、2015年は5万6500トンと国内収穫量の92%余りを占めた。夏場の温度が上がりすぎない場所で育つため、西毛と北毛が主産地。その一角を担うJA碓氷安中は、県と協力しながら安定出荷や栽培技術の向上に努め、日本の食文化の普及・継承に一役買っている。
Vol.4 チンゲンサイ
チンゲンサイは、中国から渡ってきた野菜。シャキッとした触感と癖のない味で、中華料理を中心に炒め物や鍋物、汁物などに活躍する。本県は栽培が盛んで、農林水産省の統計によると、2014年の出荷量は全国4位。県内の代表的な産地、渋川市南部や吉岡町は国内でも早い時期に栽培が始まった地域で、暖かい時期の露地栽培に加え、冬場はハウスでも栽培し、1年を通して出荷できる体制を整えている。JA北群渋川は生産者の市場視察や市場関係者との意見交換で品質の維持、向上を図るほか、伊香保温泉の旅館に食材を提供することで、地元の味のPRに一役買っている。
Vol.3 キュウリ
キュウリはシャキッとした触感とみずみずしさで、料理にアクセントをつける野菜。サラダや漬物など、活躍の場は広い。本県は全国屈指の産地で、農林水産省の統計によると、昨年度の出荷量は宮崎に次ぐ2位。邑楽館林地区は県内でも特に生産が盛んで、県内出荷量の半数以上を占めている。日照時間が長く、冬場も天候が安定していることから、施設での生産が普及した。JA邑楽館林は、午前10時までの出荷で夕方には店頭に並べる朝採りや、ご当地アイドルグループを起用した販売促進など独自の取り組みを展開。消費者のニーズに応え、農家の生産を支えている。
Vol.2 キャベツ
サラダやとんかつの付け合わせでおなじみのキャベツは、回鍋肉(ホイコーロー)、ロールキャベツなどの食材としても活躍し、食卓に欠かせない野菜の一つ。本県はキャベツの一大産地で、農林水産省の統計によると、昨年の出荷量は愛知県に次ぐ2位。その9割が嬬恋村で生産されている。嬬恋村は市町村別で全国一位の出荷量があり、標高700メートルから1400メートルの間に広がるおよそ3000ヘクタールの畑で、高原の恵みを一身に受けたキャベツが甘く柔らかく育ち、宮城から沖縄までの各地に送られている。嬬恋ブランドの信頼を合理化された出荷システムや継続的な品種改良が支えている。
Vol.1 レタス
サラダの素材でおなじみのレタスは、本県を代表する農作物の一つ。農林水産省の統計によると2009年以降、出荷量全国3位を維持していて、その8割が利根沼田地域で生産されている。1992年、同地域の10JA・1酪連の合併で誕生したJA利根沼田は20年ほど前、市場を通じて量販店などに納める数量や値段を決めてから栽培をする契約栽培方式を導入。首都圏の食卓にレタスを安定供給してきた一方、大規模産地化を促進してきた。レタスのみずみずしい味わいの中には、生産者とJA、関係者の取り組みがたっぷりと詰まっている。